時空を超えてー木々高太郎の雑記ー㊶坂崎出羽守

◆恋は捨てても男の意地
止めだてするな この出羽が
醜き顔のただれより
心は清き 槍一筋
無念の涙 宵暗の
峠にゆらぐ 幻か
狐の嫁入り 千姫の
行列の灯が過ぎてゆく

◆これは新内「坂埼出羽守」である。津和野の名門、宇喜多忠家の御曹司であった出羽守は随分剛直、気ままな男であった様だ。大阪落城の折、家康は孫の千姫を城から救い出した者に姫をやろうと約束すが、救出の際、顔にやけどを負い醜くなった坂崎をきらった千姫は、姫路の本多忠利のところへ輿入れする。

◆やけになった坂崎は酒におぼれ、お家の存続を願う家臣に殺されてしまうのである。

◆先日、親戚の結婚式が名古屋のホテルキャッスルであった。新婚カップルの入場は会場を暗転にして、スポットで照し出され一列になって入ってきた。まさしく狐の嫁入りである。不謹慎な話であるが、私はポケッとしてそれを眺めていた。一方ではニ十才の新婚と五十年近い年令の隔りをどうしょうもない思いでかみしめていた。出席者の黒い頭のシルエットが映し出され、その向こうに狐の嫁入りがいくのである。

◆丁度この日のニュースではこのキャッスルホテルで社長不在で臨時役員会が開かれ、全員一致で社長の退任が、決議されたと報じていた。

◆二、三日前には孤立無縁となった自民党の新井将敬代議士が自殺している。こわもてで、金丸信、竹下登氏らにけじめをせまったかつての闘士は、孤独が如何に無力であるかを訴え、スケープゴートにされた自分を歎きつつ死んでいくのだが、これも一種の「いじめ」である。

◆冷静に見れば、国会開催中に国会議員を逮捕許諾請求を求めて、証券法違反と言うあまり本人にも自覚の無かった容疑で逮捕すると言うのだからおだやかでない。新井代議士も出て行ってちゃんと説明すると云うのを逮捕すると云われ、それに国会議員の大方が賛成したのだから、やり切れなかったと思う。亀井静香代議士が除名問題で、加藤幹事長に一度抗議していた。

◆大体証券問題も、皆がやってるではないかと言う気があり、総会屋さんの海の家なんてのも初めは、金額も知れているし、それで済むのならと云う気が皆にあったのだが、だんだんエスカレートして金額が大きくなるし、出す方は不景気で、金を余り出したくなくなるしまあ落ち着く処へ落ち着いた感じではあるが、優秀な代議士を一人失ったのは残念な事ではある。

◆"めだかは群がる”は権力の頂点にある様な代議士先生達にも、大切な処世術である様だ。

(平成10年3月5日)