時空を超えてー春男の雑記ー 87 次にくるもの
◆今の処、銀行も困り果てているのだ。トヨタや松下は金なんかいらんと言うし、返す当てもない企業が貸してくれ貸してくれと言う図式だ。バブル以来、不況が十年続いているが我々の処ではバブル前の好況なんて隣の出来事で自分の処は全然恩恵はなかった。そしてその後の不況で困り果てている。銀行が、そんな返す当てもない処へ、金なんて貸せないのだ。危険を承知でドル債を買ったり定期預金の金利を預金者が大人しいのを良いことに、叩けるだけ叩いて、限りなく零に近い金利にして日銀親方の国債を買っている。
◆然し銀行も馬鹿ではないのだから、日銀の金利が上がり一般金利が上がってくれば、たちどころに損をするのは分かっている。1%上がれば五兆銀行は損をすると言うのだから。然し何か銀行には昔から横並び、護送船団意識があって、国債を買ってるのは内だけでない皆買ってんだと言う論理がまかり通っている、腹の太い立派な度胸であり、懲りない面々ではある。過日のG7蔵相会議では米欧共に円安に協力するから日本の零金利維持を強引に押し付けて来た。米国も欧州もそのインフレを抑える為に夫々0・25%利上げをした。
◆先日も銀行でインフレについて話し込んだ。彼らは(主に繊維であり)その得意先の余りの業績の悪さにとてもインフレなど考えられないと言う。そうかも知れないが、インフレの絶対的な条件は”物がなくなる”という事だ。不況に依る在庫の減少時に、需要が少し多く出てきた時、インフレは起きるのだ。
◆手許に先日の朝日の「調整インフレを警戒する日銀」との見出しで会川晴之と言う人の記名記事が紙面の隅に出ていたので転載する。「自民党が金融政策へのインフレターゲット導入の検討を打ち出した事について、市場ではインフレが助かるのは、不動産、建設等借金の多い業種で選挙を前にその救済を狙った議論では」と指摘している。日銀は、インフレターゲット論が、適度なインフレを起こすべきだとする調整インフレ論に繋がる事を恐れている。一度インフレが起これば調整等出来るものではない。インフレで経済問題を解決するのは極めて危険な選択だと言う事を念頭において対応すべきである。
◆昨今の新聞でも一つ問題になっているのは昨年の春、一バーレル九ドルであった石油が三倍近くなっていると言う事である。石油から二次製品を作っている所はたまったものでない。押さえ押さえられたものは、やがて爆発するだろう。小渕首相念願の経済の立ち直りがインフレに直結するのだろうか、如何に切り抜けるか。デフレのこの不景気には大概へこたれたが、次に来るインフレはスピードが早い。
(平成12年2月20日)