家族信託(民事信託)のメリット②ー遺言では不可能な先の世代まで資産承継先を定めることが可能ー
家族信託のメリット②についてまとめます。
「遺言ではできない、二次相続、三次相続における資産承継先について対応が可能」
なことかと思います。
事例をあげて説明します。
ご本人は妻と自宅で暮らしています。この夫婦の間には子供がいません。
ご本人には亡き弟がおり、亡き弟の子の姪と頻繁に連絡をとっていてこのご夫婦にとって、姪が信頼できる良き相談相手です。
ご本人が亡くなった後、妻に自分の資産を全て相続させたいと考えていますが、妻が亡くなった後は疎遠である妻の親族よりご本人の親族である姪に資産を遺したいと考えています。
・遺言を使った場合
ご本人が遺言を書いた場合、妻にすべての資産を承継させることはできます。
また同時に妻にも遺言を書いてもらい姪に資産を承継させることは可能です。ただし、遺言はいつでも撤回できるため(民法1022)、万が一、ご本人亡き後、妻と姪の仲が悪くなった場合などには撤回されてしまうリスクがあります。
また、遺言には生前の財産管理機能がないため、認知症対策とはならないので、妻の認知症対策をするためには任意後見などの活用も併用する必要があります。
もしご本人が遺言を書いて妻が遺言を残さなかった場合、ご本人が亡くなり、妻が亡くなった後は妻側の親族が法定相続人となり資産が妻の親族に承継されることになります。ご本人の親族である姪には資産は承継されません。
・家族信託を使った場合
ご本人が亡き後は妻、妻亡き後は姪が財産を取得できるよう委託者をご本人、受託者を姪、そして自宅に居住する権利は本人とする信託契約を締結します。
(信託スキーム設計)
委託者:本人
受託者:姪
受益者:本人
第二受益者:妻
信託財産:自宅、金銭
信託終了事由:本人及び妻の死亡
帰属権利者:姪
帰属権利者とは受益者の死亡などによって、家族信託が終了したときに、信託財産を引き継ぐ人のことをいいます。
上記信託契約により、姪に遺したい財産と本人及び妻のその後の財産管理を姪に任せ、資産承継の道筋を作ることができます。妻の認知症対策もある程度できます。妻が亡くなった後、残った信託財産は姪に引き継がれます。
このようなスキームを「受益者連続型信託」といいます。