家族信託(民事信託)のデメリット②ー認知症対策としての身上監護ができないー

家族信託のデメリット②ですが、

「認知症対策として家族信託を利用しても財産管理はできるが、身上監護(保護)はできない」
ことかと思います。

認知症対策で利用した場合の各種制度の保護の範囲を纏めてみました。

身上監護(保護)とは本人の生活や療養看護に関する事務をいいます。

具体的には下記のような事務が挙げられます。
・介護福祉サービスに関する事務
・施設入所契約、介護契約
・医療に関する事務(入院・退院の手続きなど)

 事実行為は「介護・看護そのもの」のことです。

成年後見制度は、本人のために任意後見人・成年後見人等が意思決定を代理人として行う制度ですので施設入所契約・介護契約等の法律行為を行うことができます。

家族信託での受託者は委託者或いは受益者の代理人ではありませんので身上監護(保護)はできません。家族信託と同時に身上監護(保護)のための任意後見契約を結ぶと安心です。

とここまでは教科書的なお話なのですが、これ以降は私見です。
私の認知症の親族が今年、介護施設へ入所しました。その際、後見人でなくても親族が身元引受人となり本人の代理人として施設と契約することができました。

施設にもよると思いますが、施設は本来は成年後見人、任意後見受任者と契約をしたいところ、成年後見制度の利用はハードルが高いので親族が身元引受人になるならといった条件付きで契約可能としている印象をもちました。
ですので家族信託契約と任意後見契約を必ずセットにするべきかどうかには議論の余地があるように感じます。
しかし、お元気な時に身上監護(保護)の為の任意後見契約を結んでおくことは安心材料であるとは思います。