時空を超えてー春男の雑記−101 難儀なこと
◆今年の夏は随分暑かった。暦では夏至が六月二十二日で、この日が一年中で一番日照時間が長いのだから、理屈で言えば一番暑い筈なんだが、夏至から六十日も経っている今日、当然日照時間も短くなっているのに、この暑さはどうなっているんだろう。大体日の出の一時間位前が一番暗い様で昔から陰の極と言うのだが、それが過ぎると少しづつ薄明るくなっていく。大阪と東京を比べると、東京の方が約十五分位早く夜が明ける様だ。東京に住んでいる速水日銀総裁も、やっと明りが見えて来たと言っているが東京は明りが見えて来たか知らないが大阪は未だ陰の極だ。
◆私達の周囲を見廻して勝ち組、負け組に色分けしても、又一人勝ちだのなんのと言っても、それでは世の中廻らない様だ。先日、名古屋の合板ベニヤ板屋さんと電話で話したのだが、彼の言うのによしんば勝ち残って見ても、自分達の使う十尺十五尺等の長いベニヤの裏板をジョイントするか工場が、少数の合板屋相手では自分の処の勘定が成り立たない。また、長尺物をスライスする工場も、二軒や三軒の合板屋相手では之も自分の処の経営が成り立たないと言う。
◆我々業界の市場を例に考えて見ても三人や五人の勝ち組だけで出品したものを分け取りされては市出し業者はたまらないと言う事になる。世の中は、はっきり勝ち組負け組に色分けされた時には、今述べた様な思いがけない事情が発生して、円滑に機能が廻っていかないようで、之は本当に“難儀な事“である。
◆昔から職商売と言う生き方がある。巧まずして之は商売の原点と言えるのではないか。我々銘木屋の中では床材加工業がこれに当たる。客の来ない時はせっせと手を動かして品物を造り、日当を稼ぎ、品物を売った口銭をその上に儲けると言う具合で、これであかんかったら仕方が無いという事である。
◆市場等で誰に会っても先が読めないと言っているが、先の読めない時は絶対に原点に戻って出直すのが原則ではないか。ここ何年かの間、円高に音を上げた加工業者が、賃金の安い台湾、東南アジアに生産拠点を移した事は事実だ。そして日本人は非生産的な流通業やサービス業に移って行ったわけで、今さら大変戻りにくいのではないかと思う。それに徐々にではあるが、日本と後進国との給与格差は縮まってきている。既に韓国に余り委託は出来ない様である。それどころか造船ハイテクでは最強のライバルと成っており、次は台湾が浮かんできている。結局は、初めの物造りに戻るほか仕方がない様だ。
◆先日のTV討論会によると、はっきり言って今年中はあかん様である。皆さんはどうしますか?
(平成12年9月20日)