時空を超えてー春男の雑記ー95 どうする どうなる

◆六月下旬に出た文藝春秋に、米マサチューセッツ工科大学の研究グループが今後十五年間に起きるであろう日本の改悪、海外派遣、また中国に於ける分裂、IT(情報処理)、バブル崩壊等について仮説のシュミレーションを基に色々論じている。話としては大変面白いので書き写して見る。

◆先ず同盟の限界と言う項目で2010年、インドとパキスタンは戦闘状態には入り、インドはインド洋を海上封鎖した。公海の自由航行を主張する米国は、自国の商船を守る為、フィリピンのスービック湾に最近再開された米海軍基地から、米空母一個機動部隊が出動してインド洋に展開した。そして米大統領は日本の首相に、最近就航した空母「大和」と「金剛」級のイージス巡洋艦の派遣を求めたが、日本の首相は伝統的に日本の船艇を日本周辺一千海里を超えた海域に派遣するのは世論の支持を得られないと応じなかった。

◆ミサイル護衛艦をつけずにインド洋に出て行った空母に、海上封鎖のインド海軍と間違えたパキスタン軍が核弾頭搭載巡航ミサイルを撃ってきた。その一発は空母に命中し長崎の原爆投下以来初めての核攻撃に依って一瞬の内に四千五百人の将兵は海の藻屑となった。

◆このニュースは米国にショックと憤慨を与えた。議会国民は、米国のアジアからの撤退を歴史的多数で支持した。そこには対アジアの永年の貿易赤字に改めて関心が集まり又同盟国である日本が、自国の兵力を危険にさらそうとする意思が無かった事、さらに米国の提供してきた安全保障に対するアジアの「ただ乗り」に怒りをぶちまけた。国内世論を踏まえて米大統領は、日本にフィリピン基地への海軍の派遣を要請するのである。

◆これを受けて首相は緊急特別閣議を召集して首相がとるべき選択肢を検討するのだが、当然防衛庁長官は、米国の要請を入れなければ日米の同盟は終わりとなり、必然核の傘も失い、アジアの安全も秩序も崩壊すると訴えた。之に大蔵大臣も同調するのだが、外務大臣は、米国と結託する事は韓国及び中国の怒りを招きかねないと言う。勿論、東南アジア諸国も日本の派兵には反対するだろう。ここで米国と組んだ時は、それまで米国にだけ向けられていた不満が日本にも向けてくるだろう。一方中国、東南アジアと組んだ時には、世界秩序が危険に曝される。その危険は抽象的では無い。世界の警察官たる米国が退場した後の世界では紛争の増加が予想され、日本は自国を守る為の意思と資源を独力で確保しなければいけなくなる。そこで読者諸君に尋ねたい「首相は常駐艦隊を派遣すべきか否か」。

◆グローバル化の進む今日、米国も日本も、代議士も市民も、▽▽銀行も〇〇銘木も皆エゴで進んで行っている事は間違い無い。然し、一方で夫々が賢明な選択をせまられている事は事実である。大きな物を見失わない、エゴを確立するしかないのではなかろうか。(文藝春秋6月25日号より)