時空を超えてー木々高太郎の雑記ー㊷身丈に合うくらしを

◆今東南アジアの経済は一時もインドネシアから目を離せない大変切羽詰まった段階にきている。三月はじめの毎日新聞に渦中のインドネシアにコラムニスト、デシ・アンワルさんの寄稿文が載っていた。決してよそ事ではない感じで、これが何時日本で起きても少しも不思議ではなく、起きる要素を日本も多分に持っている。次に氏の寄稿文を掲載すると共に一緒に考えてみたいと思う。

◆或る日突然(庶民にとってはそうとしか思えない)やってきたドルに対する自国通貨の下落は、平和な満ち足りた庶民生活を根底から覆した。4倍から5倍以上に暴騰した物価・通貨は一夜にして紙切れ同然に下落し、今までなんの気なしにスーパーで買っていたお気に入りの歯みがきからコーヒーに至るまで手に入らない様になった。

◆過去30年間、発展と成長しか知らなかったインドネシア人にとっては大変ショックだった。然しもっとショックな事は、通貨下落で輸入品が高騰したので、つつましい主婦が輸入品でないものを探すのだが、なんと歯みがきから石鹸に清涼飲料水も家電製品も全部輸入品なのだ。外貨導入のおかげとは云え、物質文明の恩恵を充分に受けていた庶民の生活が、バブル崩壊したのである。

◆その後には、需要の減退した、価格の何分の一かに下落した不動産、そしてドルの借入金を四分の一にも下落したルビアで返していかねばならないのだからこれは大変な事である。

◆商店の多くは閉店し、開けている店もこの不景気に0の一つふえた商品を買ってくれる客を探すのに苦労している。庶民は、週末旅行や海外旅行ともおさらばし車も手放した。

◆もう身の丈に合うた生活を学ぶ時だろう。消費熱に浮かされ、国際化に乗り遅れまいとして、地場産業の育成をないがしろにしたのではないか。インドネシアは豊かな自然と資源に恵まれている。借りてきた衣装は脱ぎ捨てて、自分の身に合った衣装を纏う方法を学ぶ時なのだ。もう一度インドネシア人に戻る為に。

◆以上の文はそのまま日本の明日を警告しているのだ。デフレのこの不景気は我々に在庫の縮少、生産減少を強いているが、これが徐々に回復するのであれば有難いが、一つの目途として四月一日、為替枠の撤廃を国際資本は見逃してくれるであろうか。次に必ずインフレがくるのだ。

◆元米通商代表カンター氏は、グローバルな経済の動きは大変なスピードだから、政府規制等していては必ず立ち遅れると強く言っている。何時も遠いところを見つつ、素早い決断と行動が要求される様だ。
みなさん自戒を・・・。

(平成10年3月20日)