時空を超えてー木々高太郎の雑記ー㊸鷺と鳥と鹿と馬

◆11世紀の末、十字軍の遠征で結成された「マルタ騎士団」が、今も領土を持たない国家として存続し、医療や福祉事業を続けている。
彼等は「マルタ財団」職員を名乗り、財団資金の融資保証金を、宮崎市内のパチンコ店経営者から1億6千万円詐取したと言う。

◆また大手家電販売会社に持ち込まれたのは「スイス銀行に眠る戦前のドイルマルク」だった。バブルの時も一緒だが、「喫茶ブローカー」と言う連中が、喫茶店に夫々情報を持ち寄るからそう言われている。

◆彼等が一番に狙うのは資金不足に直面している会社、そして世間知らずの二代目、三代目が社長になっている会社が狙いやすいと言う事だが、その上、銀行の貸し渋りが深刻になっている現在は、一番仕事のしやすい時である・・・とこの様な事が先日の毎日新聞の論説にに載っていた。刑事事件になりにくいと言うのも会社の体面、信用問題等を考えると、どうしても裏社会の話になっていく様だ。

◆そこで思い出されるのは、安宅産業倒産事件で、あれだけの事でと言うか、一外人の口先一つで一流商社がわけもなくひっくり返ったのだから世間はあっと言った。この事件は、いわく付の世界的な詐欺師にやられたので、テレビで放映していたが、当時者は何かはっきりした事を言わないし、わけのわからない結末だった。が、世間では歯切れの悪い裏に何かありそうな事と見ていた。それにしても目も当てられないのは、拠り出された安宅の社員達である。

◆我々中小企業では、そんな大きな金融詐欺はないだろうが、一番気をつけなければならないのは取り込み詐欺である。流通性のある商品を扱う店は用心の上に用心をしなければならない。

◆何年か前に銘木屋が何軒かやられたのは手付詐欺である。百万円の手付で二千万程の品物を持ち込ませ、倉庫へ下ろしたが最後、言を左右して金を払わない、昔から品物は下ろしたら先方のものであるから、我々は金をもらうまでは車から下ろしたらいかんとさんざん言われてきたが、この基本を守らず皆やられたのである。それにこの情報を恰好悪いと言う事もあって、同業者に正確に流さなかったから、同一人物が堂々と何回か銘木業界を引っかけたのだ。

◆有名ホテルのレストランで向かい合った初老の紳士の口から出てくる名前は、さる高貴な方であったり、正解の実力者である。そしてM資金或いは「スイス銀行に眠るナチス」の資金が語られる。一流銀行の改ざんした50億円の預金通帳等が小道具として使われる。これはオーソドックな浪漫派詐欺か・・・。

◆一方かつて熟年向けには豊田商事のゴールドと預金、昨今若い人向けには五年後買い戻し付ダイヤモンド商法、中年家庭向けには和牛商法、休日には夫婦子供連れで出資した我が家の和牛を牧場へ見に行くという随分手の込んだ詐欺まがいの商品が、次から次へと出てくるのである。これから不景気になると益々盛んになってくる。

◆世の中にはうまい話など金輪際、絶対ないのですから、財布の紐をしっかり締めて下さい。くれぐれもご用心を・・・。

(平成10年4月5日)