時空を超えてー木々高太郎の雑記ー52 余りきれいでない話

◆日経新聞の春秋子の言を借りると、今正解で一番舌峰の鋭い人は自民党の田中真紀子さんである。先日も参議院選で夫君の応援遊説のTVドキュメントを見たが、機関銃の様にまくし立てる早口の演説にドッとくる聴衆の沸き様を見ていると、丁度夫婦漫才の宮川大助花子の様である。

◆この勇ましいのが総裁選候補に言及したのを聞くと、誠に云い得て妙と言うのか皆唖然とする。三人のことを凡人、軍人、変人と言ってのけた。成程、小渕さんは自分でも人の良さを認めている。大変心くばりの良く行き届いたバランス感覚の良い無難な人だから、世間では凡人と言うのかも知れない。

◆豪胆な気風の梶山さんは軍人そのもので、小泉さんに到っては変人となると本人も釈然としないだろうが、田中さんは小泉さんに一票を投じたと言うのだからややこしい。但しこの人は乱世の人かも知れない。昔中国で言われていた長頸烏喙(首が長く口のとがった人相)であるから乱世を制する人相をしている。その上「どうせ在庫一掃ガレージセールなのだから出たい人は皆出たら良い。」と言い切ったのだからすごい。三人の頭上から汚物をぶちまけた様なすざましい言葉である。

◆岸本葉子さんのエッセイ「個室感」によると、中国のトイレは仕切りの無い事で名高い。一本の溝に前後してまたがるタイプ、隣り合った別々の溝にまたがるタイプと様々だが、お互いの動静が手にとる様にわかる至近距離にありながら、皆夫々が自分の事に専念するがすることは共通だ。まるで個室の中にいる様にしゃがんだまま本を読みふける人まで居る。住宅事情や、日頃の生活習慣から人々は見えない仕切りを設けるのかも知れないと書いている。

◆私が中国東北部にいた頃は、便所は一寸高い所にあり、落ち行く先には豚がいてこれがきれいに始末をしていた。沖縄でもそういう事をしている処がある。そして南方の水上生活をしている人達の便所では、ポットンと落ちるとお魚がすいと寄ってきて直に頂いてしまうと言う事である。前の豚さんにおいても、今のお魚さんにしても当然、出資者と言うか食料を提供している飼育者が頂いてしまうのだから、生活サイクルとしては大変まっとうなのだ。

◆但しこの魚を頭からかぶるのだけは止めた方がよろしい。「流石吉野の天然の鮎は美味しい。苔を食って育っとるからこの腹のホロッとした苦味は格別やなあ」とはいきません。”なんやこの匂いはどこかで嗅いだなつかしい匂いや”と言わなければならない。

(平成10年8月20日)