時空を超えてー春男の雑記ー110 デフレを逆手に
◆二千年も昔は皆貫頭衣を着て畑を耕していた。その頃は随分と平和であった。そこへ山を超えてややこしいのがやって来た。見た事も無い立派な着物をきているので、きっとえらい人であろうと皆地面へ座ってお辞儀をした。それから二千年経った今も同じ事である。ブランド物の上等の服を着た人は偉いのだ。バブルで生活水準の上がった人達はそれらを買い、身につけ出した。
◆その頃は日本もすべて順調だった。然しある日突然起きたバブルの崩壊は、台風の様に日本全土に襲ってきた。逃げる暇も無く株と土地の価格は三分の一以下に下がってしまった。それに拍車をかけたのは、価格破壊と言う自分以外は全部叩き潰す、昔から言う処の自分も食わにゃ人にも食わさないと言う商法だから力の無い個人商店は潰れるのは当たり前である。勝ち抜いたと思われたダイエーの膨大な借金、一世を風靡した背広の青山商会の声は今や余り聞こえない。そして昨今はユニクロなんてのが現れてきた。生地から最終製品までの一切を自分の手でやり、利益は絶対他人にはやらない、と言う商法である。商品開発も幾ら優秀なメンバーを揃えても、自己開発だけでは自ずと限度があり、客のリピート率はかなり低い様である。
◆今、言うまでも無く日本は、世界的に見て生活物資の高い国である。一時ある一流ホテルのレストランの料理は高い事で有名だったが最近は是正されたそうだ。然し未だに為替の差を直しても、米英より四割位は高い様である。グローバル化した経済の中において当然下方修正されるのは当たり前で、政府は国民の収入の減らないのを手柄の様に思っているが、私等から言わせれば、先ず官庁・銀行の給料を下げてリストラを無くすのがベストではないかと思う。我々中小企業では、経費の中に占める給料のウエイトの高さが最後まで重荷となっている。この様な高コスト構造を是正して、外国との価格差を縮小する為には、物価の下降を内包した経済を見据え、対応する他はない。
◆例えば今迄は多少無理をして借金していても四、五年経てば毎月の返済が楽になると言うパターンであったが、今後はその様な事は絶対に無い。むしろ周囲の諸物価が下がっていく事により借金は実質的に増大するのである。然し、考え方を変えれば悪い事ばかりでも無い。⑴先ず生活費が下がる。給料は上がらなくても金の値打ちが出てきて使いでがある。企業も売上は増えないがコストが下がるので案外利益が出る。⑵工賃コストの低下は、海外に工場を移さなくても良くなり日本で雇用機会がふえる。⑶物価下降が財政面に及ばす影響は、税収は減るのであるが、公共工事の支出は格段に減るだろう。今や否応なしに物価下降は続くだろうが、ここに至って国を挙げての競争力を養う為の規制の撤廃は断固して欲しい。
◆品確法は町の工務店では家が建てられないような規制が多い。我々木材業者は無関心、又は一人では言うても始まらないという敗北主義から立ち直ろう。そうしなければ、大企業のハウスメーカーに根こそぎやられて仕舞うだろう。
(平成13年2月20日)