時空を超えてー木々高太郎の雑記ー⑮天王寺さん

◆星移り人変われどもお彼岸に天王寺さんに参る人々の波は変わらね様だ。西門の鳥居の結界をくぐり、お釈迦様の佛法を説くこの霊場へ一歩足を踏み入れた時から人は善男善女となり、又そこからは極楽浄土と同じであると言うのだから誠にこれ程有り難い事はない。

◆千四百年の歴史を持つ佛法修行の根本道場である四天王寺は、昔から色々な言い伝えがある。
所説ある中より代表的な四天王寺七不思議を書いて見たいと思う。

(一)五重の塔の尖端は水煙が付いていて、天女が透かし彫されており九輪が付いている。それを支えている台座金具は須弥山の南の島で取れる最高級品の砂金で造ってあるので錆びない。又は聖徳太子が造られた物で佛教の盛衰で色が輝いたりくもったり変るとも言う。

(二)経木を流す亀井の水は天竺、龍宮、天王寺へと流れて来るので涸れる事はない。後世、隅田川の水はテームズ川へつながっていると言った人もいた。

(三)金堂の雨落ちには天竺の銀が敷かれているので窪まない。或いは境内の何尺か下は銀が敷きつめてあると言う説もある。

(四)亀の池にすむ蛙は、池の底に住む十尺の大蛇を恐れて鳴かない。

(五)仁王さんが立派なので仁王門の上を鳥は飛ばない。雀も足を交互にして歩く(鳩の様に)という話だが現在の蛙さんや雀さんはどうですか?

(六)金堂の柱は赤栴檀で造られているので永久に朽ちない。佛さんの偉大なお力は、木の中で一番くされ易い栴檀をも永久にくさらないと言い切っているのだから大したものだ。

(七)境内の樹木は金堂や宝塔より高くならないし、又高くなっても枝が下へ向いて延びる。

◆人々は昔からこの様に法力を信じ、心の安らぎを求め、お彼岸には必ず天王寺さんへ先祖供養にお詣りに来た様だ。

◆境内に入ると鳴り続けている鐘は、一般には引導鐘と言っているが、この鐘はある面では大変有名だ。鐘は、春秋お彼岸の頃の気温で日本の古い音楽の調子の黄鐘調で鳴るのである。洋楽で云うなら「ラ」の音で、オーケストラがチューニングする音である。この鐘の音で天王寺の楽人は育ったと言う。

◆お彼岸には京都の東寺の弘法市に負けない位、露店が出て、何十年何百年も前と同じ風景が此処で再現されている。春の一日どうぞ皆さん善男善女になるのも良い事ですよ。

(平成9年3月15日)