高齢者等終身サポート事業者の不正は発覚するのでしょうか?

近年、「身元保証」「日常生活支援」「財産管理」「死後事務」などを提供する高齢者等終身サポート事業者が急速に増えています。

身寄りのない高齢者や、子どもに迷惑をかけたくないと考える方にとって、大変心強いサービスです。

一方で、

「財産を預けても本当に大丈夫なのか。」
「もし不正があったら発覚するのか。」

という不安を抱く方も少なくありません。

成年後見制度との決定的な違い

成年後見人は、家庭裁判所の監督を受けています。

定期的に財産状況や収支を報告し、必要に応じて通帳や領収書なども確認されます。不自然な出金や説明できない支出があれば、家庭裁判所から説明を求められ、悪質な場合には解任や損害賠償請求、刑事責任に発展することもあります。

一方、高齢者等終身サポート事業者には、このような家庭裁判所による監督制度はありません。

さらに、この事業は現在のところ許認可制ではありません。

つまり、一定の資格や行政の許可がなければ営業できない事業ではなく、法律上の登録制度もありません。

「監督省庁はどこですか?」

実は、この質問に明確に答えることは簡単ではありません。

高齢者等終身サポート事業は、

  • 身元保証
  • 財産管理
  • 日常生活支援
  • 死後事務
  • 葬儀・納骨の手配

など、さまざまなサービスを組み合わせて提供しています。

事業者によって力を入れているサービスが違います。

そのため、一つの法律で包括的に規制されている事業ではなく、「この事業は○○省の許可事業です」と言えるものでもありません。

利用者から見れば、「どこが監督しているのか分からない」という不安につながりやすいのが現状です。

だからこそ国はガイドラインを作った

こうした状況を受け、2024年に関係省庁は「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました。

https://www.moj.go.jp/content/001420018.pdf

このガイドラインが作られた背景には、

  • 事業者が急速に増加していること
  • 利用者とのトラブルが報告されていること
  • 財産管理の透明性を高める必要があること
  • 利用者保護のルールを明確にする必要があること

といった事情があります。

ただし、このガイドラインは利用者保護のための指針であり、成年後見制度のように家庭裁判所が継続的に監督する制度を設けたものではありません。

不正はどのように発覚するのか

では、不正は発覚しないのでしょうか。

そんなことはありません。

例えば、

  • 利用者本人が通帳や収支を確認したとき
  • 親族が財産状況を調査したとき
  • 利用者の死亡後、相続人が調査したとき
  • 職員による内部告発
  • 金融機関や他の専門職が不自然な取引に気付いたとき

などが発覚のきっかけになります。

しかし、判断能力が低下している方や身寄りのない方の場合には、これらのチェックが十分に働かず、不正が長期間見過ごされる可能性もあります。

信頼できる事業者とは

だからこそ、これからの終身サポート事業者には、「不正をしない」だけではなく、「不正ができない仕組み」を備えることが求められます。

例えば、

  • 利用者ごとの財産を分別管理する
  • 定期的に収支報告を行う
  • 通帳や領収書をいつでも確認できるようにする
  • 複数人で出金を確認する仕組みを導入する
  • 外部の専門家による監査やチェックを受ける

こうした透明性の高い運営が、利用者の安心につながります。

監督体制が曖昧だからこそ、「闇の中」のままになる可能性も

もう一つ、見過ごせない問題があります。

それは、監督体制が明確ではないため、不正が起きても表面化しないまま終わってしまう可能性があるということです。

成年後見制度であれば、家庭裁判所への定期報告や監督を通じて、不正が発覚する機会があります。

しかし、高齢者等終身サポート事業では、「どの行政機関が継続的に監督するのか」が明確ではなく、許認可制でもありません。

そのため、利用者本人に判断能力の低下があり、身近に親族もいない場合には、不正や不適切な財産管理が行われても、それを発見し、是正する機会がないまま時間だけが過ぎてしまうおそれがあります。

さらに、利用者が亡くなり、相続人もいないケースでは、問題そのものが誰にも気付かれず、「闇の中」のまま終わってしまう可能性も否定できません。

もちろん、多くの事業者は誠実に業務を行っていると思います。しかし、利用者の財産や人生の最終段階に深く関わるサービスだからこそ、「悪意のある事業者が存在する可能性」を前提に制度を設計することが、利用者保護の観点からは重要です。

私は、今後この業界が社会的な信頼を得て発展していくためには、事業者の自主的な透明性の向上だけでなく、第三者による実効性のあるチェック体制や監督のあり方についても、さらに議論が深まることを期待しています。

おわりに

高齢者等終身サポート事業は、これからの超高齢化社会に成年後見制度と並んで必要とされるサービスになるかと思います。

しかし、許認可制度ではなく、監督する行政機関も分かりにくい現状では、「事業者だから安心」と考えるのは危険です。

利用者が見るべきなのは、その事業者がどのような仕組みで財産を管理し、誰がチェックし、どのように説明責任を果たしているのかという点です。

終身サポートは、人の人生の最終章を支える大切な仕事です。だからこそ、「信頼される仕組み」が大切なのではないでしょうか。