遺贈寄附の闇
物事には光と影があり、遺贈寄附は「亡くなった後も想いが繋がる。」という光がある一方で残念ながら影もあります。
2026年7月に高齢者等終身サポート事業の寄附に関する倫理のあり方研究会実行委員会から報告書が発表されました。
特に高齢者等終身サポート事業に纏わる遺贈寄附は社会問題となっています。
こちらの報告書には具体的な事例が載っており大変参考になりましたので、ひとつずつ書いてみたいと思います。
① 利用者からの遺贈獲得を職員のノルマとしている事業者があり、職員が利用者から遺贈を得ること自体が評価対象となり、達成しなければ叱責や評価低下、達成すれば評価上昇につながるような運用が行われている。
問題点:利用者の福祉よりも遺贈獲得を優先させる実務を生みかねず、重大な倫理上の問題がある。
② 役員個人が資産のある高齢者に自ら接近し、最終的に自分個人が受け取る流れを作っている。
問題点:組織として受けるのではなく、役員個人が事実上の受領者となる行為であり、典型的な利益相反かつ私的流用の危険がある。
③ 役員や関係者だけで別団体を設立し、その別団体に遺贈させる迂回的受領が行われている。
問題点:形式上は第三者団体への遺贈に見えても、実質的には役員や関係者の支配下にある団体であり、実質的な利益相反関係は解消されていない。
④ ヘルパーが利用者から遺贈を受け取っている。また、ある団体に遺贈が入ることが決まった際、「その財産は私がもらう予定だったのに、なぜあなたたちが受け取っているのか」と苦情を述べた事例がある。
問題点:現場レベルで既に利用者財産をめぐる私的受領への期待が生じており、支援者としての倫理性や中立性が損なわれている。
⑤ 社会福祉施設職員や福祉施設関係者が個人として財産を受け取っているケースがある。
問題点:終身サポート事業者に限らず、福祉現場全体に共通する倫理上の課題となっている。
⑥ 高齢者等終身サポート事業に関わる営利事業者の中には、利用者等からの遺贈を事業上の収益として受領している実態がある。
問題点:遺贈受領が利用者支援の延長ではなく、事業収益を目的としたものとなるおそれがある。
⑦ 営利事業者が「今年もかなりの金額を受け取った」「遺言書が出てくるのでありがたい商売だ」と語り、遺贈受領を事業収益として認識している。
問題点:遺贈を利用者の善意ではなく収益源として捉える姿勢であり、利用者保護や事業倫理の観点から重大な問題がある。
あまりにもひどい事例に唖然としました。遺贈寄附は特におひとり様の場合は遺言書があれば完全犯罪に近いことが出来るから悪用されるのだと思います。しかも、今の日本では「犯罪」ではありません。この事態は国が高齢者等終身サポート事業者が遺贈寄附を受けることを禁じていないことが理由にあると思います。一方で利用者さんの「寄附をしたい」という気持ちを国が禁じるのもおかしいですので難しいところではあります。実際、報告書に書かれているガイドラインでも遺贈寄附を高齢者等終身サポート事業者が受けることを完全には禁止していません。
しかし、私は一貫して「高齢者等終身サポート事業者が遺贈寄附を受けるべきでない。士業も遺贈寄附を受けてはいけない。」という立場です。サービスをしたことに対しての料金を利用者さんには支払ってもらえばいい話で例えば不動産まで事業者に寄附するのはおかしい話だと思いませんか?生前に利用料を支払えない人達の為には社会福祉協議会や国がこうしたサービスを安い金額でする仕組みを作るという流れもあります。こうした事業者を頼らない他の選択肢もあることをお伝えしたいです。
高齢者等終身サポート事業者の中には遺贈寄附を受けないことを宣言している事業者もあります。事業者選びは大事です。遺贈寄附を当てにして運営しているような事業者にはくれぐれも気をつけて下さい。
9月16日に遺贈寄附のセミナーを行います。社会貢献をしている寄付先は沢山あります。事業者から遺贈寄附を迫られることなく、寄付をしたい人がじっくり考えて選んで遺贈寄附をして頂きたいと思います。


