法改正から考える高齢者施設への遺贈寄付

法務省の資料を基に、高齢者施設への遺贈寄付について考えてみたいと思います。

令和8年(2026年)6月24日公布の民法等の一部を改正する法律について、法務省が公表している資料があります。

法務省「民法等の一部を改正する法律」に関する資料(PDF)

私がこの資料の中で特に注目したのは、民法第974条の「遺言の証人及び立会人の欠格事由」に関する改正です。

1.遺言の証人等になれない人の範囲が拡大

民法第974条は、遺言の証人または立会人になることができない人について定めています。

現行法では、未成年者や推定相続人、受遺者とその配偶者・直系血族などが対象となっています。

今回の改正では、欠格事由の範囲が拡大され、受遺者だけでなく、その被用者も対象となります。また、受遺者が法人である場合には、その被用者や役員も対象となるとされています。

私が注目したのは、この改正についての資料に、次のような説明があることです。

「単身高齢者が増加し、入所している高齢者施設等への遺贈が行われる例あり」

法務省が、改正の背景を説明する中で、高齢者施設への遺贈に言及していることには、考えておくべき意味があるのではないかと感じました。

今回の改正は、遺言者の意思を守るため、遺贈を受ける側の関係者が遺言の手続に関わることについても配慮するものと考えられます。

財産を受け取る人や団体が遺言の作成に関わる場合には、遺言者が本当に自分の意思で決めているのか、慎重に考える必要があるということです。

2.高齢者施設への遺贈寄付は、どのように考えればよいのでしょうか

高齢者施設の入所者と職員との間には、日々の生活や介護を通じた深い関わりがあります。

入所者が施設に感謝し、「自分の財産を施設に役立ててほしい」と考えることは、十分にあり得ることです。そのお気持ちや、ご本人が自ら決めた寄付先は尊重されるべきでしょう。

一方で、入所者が生活全般を施設に支えてもらっている場合、施設側の意向が本人の判断に影響を与えていないか、周囲から見ても疑念のない形になっているかという視点も必要です。

もちろん、高齢者施設への遺贈寄付がすべて問題であるということではありません。

大切なのは、本人が自らの意思で寄付を望んでいるのか、財産を遺すことについて十分に理解しているのか、そして、その意思が周囲からの不当な働きかけによって形成されたものではないか、という点です。

今回の法改正をきっかけに、高齢者施設への遺贈寄付と、本人の意思を守ることについて、改めて考えてみたいと思います。

3.遺贈寄付の行き先は、もっと幅広くあってよい

私は、遺贈寄付を考える際には、寄付先の選択肢を幅広く知っていただくことも大切だと考えています。

高齢者施設でお世話になったことへの感謝は、もちろん大切です。ただ、介護サービスに対しては、通常、利用料などの対価を支払っています。そのうえで、亡くなった後の財産をどこに託すかについては、もう少し広い視野で考えてもよいのではないでしょうか。

例えば、子どもや若者の支援、医療や福祉、芸術文化の振興、環境保全、災害支援など、社会にはさまざまな課題があり、その解決に向けて活動している公益的な団体があります。

自分が大切にしてきた活動を応援したい。次の世代によりよい社会を残したい。自分の財産を、社会全体のために役立ててほしい。

そうした思いを実現するために、公益的な団体への遺贈寄付を選ぶこともできます。

遺贈寄付は、必ずしも自分が直接お世話になった場所にする必要はありません。

寄付先の選択は、あくまでも本人の自由です。だからこそ、特定の施設や団体だけでなく、幅広い選択肢を知ったうえで、ご自身の思いに合った寄付先を選んでいただきたいと思います。

4.元気なうちから、財産の行き先を考えておく

遺言や遺贈寄付は、亡くなる直前になって考えるものとは限りません。

自分が元気で、落ち着いて判断できるうちに、これからの暮らしや財産の行き先について考えておくことが大切です。

遺贈寄付は、単に財産を譲るということではありません。自分がどのように生き、何を大切にしてきたのかを、次の世代や社会につなぐ選択でもあります。

だからこそ、寄付をする方の思いが適切な形で実現できるよう、早い段階から準備しておきたいものです。

「自分の財産をどう遺したらよいか分からない」
「遺贈寄付について考えてみたい」
「社会のために財産を役立てる方法を知りたい」

そのような方は、ぜひ遺贈寄付について学び、ご自身の思いを整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

当事務所では、11月21日に遺贈寄付についてのセミナーを開催します。

遺贈寄付の仕組みや、財産を社会に託すという選択について、一緒に考えてみませんか。

皆さまのご参加をお待ちしております。